研究内容

環境インフラの更新・再編を支援する評価モデルの開発

エネルギーの高度利用を図る地域環境施設の更新支援

 脱炭素社会の構築に向け、下水処理場やごみ焼却施設に代表される地域環境施設は地域のエネルギー拠点へと転換することが求められています。そうした取り組みにおいては、施設内における創意工夫したプロセスの設計、施設間連携を通した技術システムの再構築が必要となります。
 当研究室では、大規模下水処理場における下水汚泥エネルギー化技術の導入計画、下水処理場とごみ焼却施設の連携型更新計画、小規模下水処理場における太陽光発電を活用した電力自給を題材として、更新計画論を体系化するための研究に取り組んでいます。

人口減少時代に適応する生活排水処理インフラの再編支援

 人口減少・少子高齢化時代を迎えるにあたり、生活排水処理・汚泥資源化事業の効率化が求められます。これまで、下水処理場が下水汚泥の処理を、し尿処理場がし尿・浄化槽汚泥の処理を担ってきましたが、汚泥処理機能の統合化を検討する必要性が生じています。加えて、集合処理(下水道)と個別処理(浄化槽)の分担構造のあり方を見直し、下水道区域の縮小も視野に入れたインフラ更新計画の具体化が求められます。
 当研究室では、生活排水処理インフラの再編に向けた計画の提案と、その環境性・経済性を評価するためのモデル開発に取り組んでいます。

ごみ焼却施設の地域エネルギーセンター化を支援するモデル開発

 ごみ焼却施設はこれまで、迷惑施設としてまち中に建設することを避けて立地選定が行われてきましたが、今後の新規建設にあたっては、地域エネルギーセンターとしてまち中に建設するとともに、熱需要施設との隣接による熱電併給事業の展開を模索することが求められます。一方で、既設のごみ焼却施設においても、廃棄物発電を地域新電力事業におけるベース電源として活用していくことが期待されます。
 当研究室では、熱電併給型のごみ焼却施設の設計支援、地域の発電所としての機能を優先する稼働計画の立案を通して、ごみ焼却施設が地域で生み出す付加価値・サービスを評価する研究に取り組んでいます。


環境リスクの評価・管理に関する研究

汚水処理率の改善が河川生態系に与える効果の分析

 全国の汚水処理人口普及率は91.7% (環境省,2019) となっており、生活雑排水を未処理のまま河川に放流する人口は依然として8.3%存在しています。下水道未接続世帯を含む汚水処理率で見ると、生活雑排水の未処理人口はこれよりも多いのが現状です。一方で、汚水処理率の改善が河川生態系へどのような影響を与えるのか、水生生物の生息環境に着目した研究は十分に行われていません。
 当研究室では、汚水処理率改善シナリオを設計するとともに、汚水処理率の改善が水生生物の生息ポテンシャルの向上に及ぼす効果を分析するための評価モデルの開発に取り組んでいます。

災害・事故等に伴う化学物質流出を対象としたリスク評価と対策効果分析

 災害・事故等に伴い発生しうる化学物質の非定常リスクに対する対策論の構築に向けては、短期的な急性毒性ベースでのリスク管理と、中長期的な慢性毒性ベースでのリスク管理の両方が検討課題となります。
 当研究室では後者(回復期のリスク管理とその対策)に力点を置いた研究に取り組んでいます。具体的には、流出が起きた地域の空間要素を踏まえ、発生からの経過時間軸において、どの環境媒体にどの程度の濃度が出現しうるかを把握するためのツール開発を行っています。

レジリエンス概念を具現化する計画論の提案

 米国科学アカデミーの報告書『Disaster Resilience: A National Imperative (U.S. NAS, 2012)』では、レジリエンスを“悪影響を及ぼす事象に対し事前に準備・計画する能力、影響を吸収する能力、回復する能力、より巧く適応する能力”と定義しています。従来の災害対策は、被害が起きないようにすること(被害の発生確率の低減策)に力点が置かれていましたが、我が国の今後の防災においては、回復力や適応力の観点での災害対策(被害の大きさの低減策)の重要性も増しています。
 当研究室では、レジリエンス概念を具現化する計画論の提案に向けた研究に取り組んでいます。


研究プロジェクト

【進行中の獲得研究費】

【終了した研究費】